プチ春劇場:「あなた自身の天使のために」:第8話



長い夏が終り、休み明けのテストもなんとか終った。
そして学園祭の準備一色に なった。各出しものの準備はいよいよ大詰めを向かえた。
貴公子岡田のクラスは 「秋のソナタ」というセンスのない劇をやるらしい。
もちろん脚本、演出は岡田 。主人公も岡田であった。
昭平達のクラスも「天使に恋をした」というタイトル の劇をする。
もちろんオリジナルの学園ものの劇で、何故か河原のシーンが多い 。
マドンナ小峰の演出によりようやくいいとこまできた。
七瀬のクラスも「オツベルと子像」ていう劇をやるようだ。
内容はオツベル少年と子像の友情を描いたという題名のとおりのものであった。
あれからマドンナと修一の間はうまくい っているというわけじゃないようで、修一は人知れずヘコんでいるようだ。
ある日の六時間目。昭平達は野球史の授業を受けていた

南波先生:え〜〜。ホークスというのは・・・・
昭平:修一なんか元気ないよな―(小声)
浩介:・・・(上の空)
昭平:お〜い。(前の席の浩介に大きな声で言った)
南波:はあ〜〜ん!?(机の上に乗り出した)
昭平:す、すいません。ホークスの話続けてください、先生。

ところ変わって廊下

浩介:なんで僕まで
昭平:でもうちの学校って、日本史や世界史の他になんで野球史まであんだよ?
    そんなんいらないだろが!!(二人は廊下にたたされていた)
南波:はーー!?(窓から顔を出した)(どうやら今の話が聞こえたらしい)

ところ同じくして廊下。二人の手にはバケツ

浩介:なんでいまどき廊下で、バケツもたされるんだよ。
昭平:南波、最近「ワシは久しぶりにぶちギレた」とかいってたからじゃない?
    それより何考えてたんだ?
浩介:別に
昭平:なんか冷たいぞ

二人の沈黙が少し続いた。するとそこに修一がでてきた。

浩介:どうしたの?
昭平:南波に「僕はドラゴンズファンです」っていったら立たされた
浩介:相当今の野球に怒ってるね〜南波さん
修一:なんでいまどき廊下にバケツなんだ?
浩介:間違ってるよな〜
三人:はーー(溜め息)
昭平:俺らって似たもの同士かもな〜
二人:一緒にすんなよ。俺らは理由なく立たされてるの!!
昭平:え!!そんな風に言う!?(大声)
南波:は〜〜(廊下で騒いでいる三人に怒りながら笑っているという、とてもビ ミョ―な顔を窓から覗かした)
三人:もういいから

チャイムが鳴り。授業が終った。そしていよいよ各クラスが動き出した。
倉庫に大道具を取りに行く純子とかおり

かおり:野球史の時間たたされてたのよ。あの三人
純子:かおりも野球史だったけ?
かおり:ううん。私は違うけど岡田君に聞いた
純子:ね〜。かおりは岡田君とどういう関係なの?
かおり:どういう?って?
純子:そのままの意味よ
かおり:岡田君はね、私と同じテニススクールに小学校の時通ってたの
純子:ふーん。そうだったんだ。でも、ホントにそれだけ?
かおり:それだけ?って?
純子:そのままの意味よ
かおり:そうよ(少し下を向いて小さくいった。顔色をうかがうことはできなか った)
純子:本当に?言っちゃいなさいよ。誰もいまいないんだし
かおり:私ね・・・

ところ変わり生徒会室。なぜかOBがこの時期に生徒会室に集る。
その生徒会室に渡会と修一が二人、座りながら話をしてる

修一:あの〜。先輩。聞きたいことがあるんですけど
渡会(元生徒会会長で修一の憧れの先輩):なに?(椅子に座ってルービックキ ューブをしている)
修一:俺、彼女に最近「優しすぎる」って言われちゃって、、、なんか俺したんですかね?
渡会:優しすぎることしたんじゃない?(真剣でない言い方)
修一:そうっすね。自分なんか優しすぎたような気してきました。
渡会:わかった?(「よく聞いてないけど、ま、いいか」)
修一:俺、自分にも相手にも余計な優しさを与えていたように思えます。ありがとうございます!
    先輩に話聞いてもらって何か分かった気がします。ホントありがとうござました
渡会:それはよかった。ま、頑張ってこい(ルービックキューブをみつめている )

修一でていく。渡会だけの生徒会室。

渡会:ワァ〜〜ア(あくび)なんだか最近よくわかんないね〜。 
    おや、そこにいるのは浩介だね。話あるなら入ってこいよ(独り言のように)
浩介:先輩にはかなわないですね

浩介入ってくる。 渡

会:最近なんかみんな忙しいな―。でさー話は飛ぶけど、どう?最近うまくいってるの?
浩介:僕らのクラスは演出がいいからうまくいってますよ
渡会:違うよ。浩介ちゃんのほう。
浩介:実は・・・ 浩介は渡会に今までのことを全て話した。
渡会:要するに美雪ちゃんかかおりちゃんか今迷ってるの?
浩介:そういう言い方をすれば、まあそんなとこです。
    けど、僕はかおりのこと が今まで本当に好きだったのか分からなくなってきて、、、
    ただ見た目だけで好 きになったわけではないつもりです。
    でも彼女のことが本当に好きだったのか、 今は分かりません
渡会:それは貴公子ってのとかおりちゃんが最近仲いいから?
    諦め?やきもちっ てのでないか?(ルービックキューブを机に置いた)

渡会はまるで岡田のことを知らない人のように言った。
しかし岡田も少なからず 生徒会の役員であった。その事を思い出し、浩介はその気づかいを感じ取った。
だが今の浩介には全く意味のないことだった。
彼は相手が誰であるかはを気にはしていなく、自分の心の迷いと闘っていた。

浩介:・・・そうかもしれません。よく分からないんですけど、、、僕は臆病なだけなんですかね?
    傷付くことから逃げてるんでしょうか?
    かおりが手に入らないかもしれないと思ったらか興味を失ったんですかね?
渡会:そんなの俺には分からないさ。だけどな、美雪ちゃんが好きだってのは本 当なんだろ?
    嘘じゃないんだろ?
浩介:はい。嘘じゃないです。(「だけどあの日、かおりに思ったことも嘘じゃないはずです。」)
渡会:ならそれは嘘じゃない!お前は美雪ちゃんが好きなんだ!偽りはない!
浩介:・・はい(「・・・・」素直にそう思えなかった)
渡会:今俺もお前にいい答えを出してやれないけれども、これは言えるんじゃないか?
    お前は今、かおりちゃんより美雪ちゃんのほうに気がいっている。
浩介:・・・また来ていいですか
渡会:おう!

生徒会室から浩介が出ていった。浩介は何かを掴んだのだろうか

渡会:ふ〜〜。(生徒会室の岡田の机に目を向けた)

浩介は気分転換に久々に図書館に行った。 浩介はこの時ちょっと試したいことがあった。
本当にかおりが自分にとってなん でもなかった人だったのか、、、
もしそうでなければ、きっと声をかおりがあの 時のようにかけてくれる。
そんな気がしていた。どこにも根拠がないことだったが、期待をしていたのだろうか。
信じていたのだろうか。きっと会えるような気がした。どこかに妙な確信を浩介は持っていたようだった。
いつのまにか、かおりを浩介は待っていた。 浩介いつもの席に座って待った。
ずっとずっと待った。閉館時間まで待った。けれど誰も結局来なかった。
浩介図書館を出る

浩介:バカやったよ。何やってたんだろうー(独り言)
かおり:ははは・・・

浩介が振り返ると自転車置き場の方からかおりの笑い声が小さく聞こえた。
横には岡田がいた。どうやら図書館に二人で来ていたようだった
浩介は突然走り出した。もうなにも考えたくなかった。
見たくないものを見てしまった。彼は走り続けた。後ろは振り返らなかった。

浩介:アホだな―僕も。結局僕が一人でバカみたいに考えてただけじゃないか。
     一人、盛り上がっていて、ホントどうしょうもないよ。ホント。

浩介は河原まで走った。そこに答えがいつものようにあるような気がした・・・



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