プチ春劇場:「あなた自身の天使のために」:第12話



学園祭三日目。今日は文化部&生徒会による討論会の日である。出席率40%。
当然浩介達のクラスは全員欠席をさせまだ完成していない大道具造りにキャスト
も含め演出までも加わった。この時期はどの団体もこのようなことになっている。
もちろん貴公子や美雪達も例外ではない
麻都佳と修一と純子は三人で急遽造った壁のペンキ塗りをしている。
そして例の三人は会話なしでその他のセットを造っていた。

修一:(昭平達を見て)なんかやばくね〜
麻都佳:声大きいわよ!
修一:ゴメン!
純子:シー!
修一:ごっ、、、
麻都佳:昨日かおりどうだった?
純子:その話なんだけど…
麻都佳:なになに??
修一:え!もう一回!聞こえない
二人:女の話に男は入らないの!
修一:なにそれ!?酷くな〜い?!俺ら仲間じゃなーい?
   ってか俺浩介のキュ―ピットじなーい?…(泣)
麻都佳:しっー!!もう、しょうがないんだから。

そして三人はそれぞれの情報を提供しあった。

純子:それが……
二人:えー!まじで!!
修一:でね………
二人:え〜本当に!!
麻都佳:二人ともそんなの話してよかったの?!
二人:……(時既に遅し)

ノリで人の秘密を言ってしまったが、なにはともあれ、クラスの悩みはみんなの
悩みということで、この三人は誰からも頼まれていない“カップル成立大作戦”
を練った。修一がまだなにも塗ってない壁のベニヤにペンキでイニシャルの書い
た相合い傘を書き出した。

純子:このK・Sが佐藤ね、それでこれが、、

どうやら修一の計画は浩介とかおり、昭平と美雪、そして岡田と…をひっつけちまえっといった
かなりおせっかいな計画である

純子:え!あの七瀬さんと山本?!やだ〜。七瀬ってあの七瀬でしょ〜
修一:無茶苦茶言うなぁ…いいじゃん!かわいんだから昭平もきっと好きになるよ
麻都佳:ちょっと余計なお世話になってきてない?私たち…
修一:コレゾ天使の仕事よ!もう見ているだけなんて嫌!
純子:あれ?そのセリフなんか懐かしくない?どっかで聞いたような…?

麻都佳が何かに気付いたのか、明るい声で聞いた

麻都佳:ねー!修一!この岡田君の相手って…
修一:小林だよ
純子:!!私!(顔が赤くなった)
修一:いいじゃん。アレ、カッコいいんだろ?春じゃないか?!

戸惑う純子を見て二人は揃って

二人:グットラック!!

一方こちらの三人はそれぞればらばらで黙々と作業をしていた。
そして、かおりの前に昭平がやってきた。

昭平:この前はいきなりごめん。あの事は忘れてくれよ。

ふっと笑いを見せた昭平に安心したかおりの顔をうかがうかのように見ながら続けた

昭平:本番まで今日いれて練習できるのは二日。もっぱら今日はこんなんだから明日しかない!
最後の学園祭、劇のことに集中しよう!それからでいい……

優しい声がいきなり小さくなったのをかおりは感じた。
目の前にいる一人の男ができる限りの作り笑いをしている。他ならぬ、自分のために。

かおり:うん。ありがとう、昭ちゃん!

だから彼女も彼にいつも通りの最高の笑顔を見せた。

そんな二人を見て

修一:今の見た?!あの二人いい感じでね〜?計画変更する?浩介と…

麻都佳は今にも暴走しそうな修一を連れて足りなくなったペンキの買い出しに行くことにした。
麻都佳はこの時も修一の夢を叶えるためのことを考えていた。そんなことを知ら
ずに横の男はキュ―ピットと言うよりまさに“恋の邪魔者の邪魔者”であった。
半おせっかい野郎だった
そして今度はかおりから昭平に話しかけた

かおり:ねえ、浩ちゃんとなんかあったの?
昭平:(少しだまって)別に、、

こっちでは純子が浩介によった

純子:佐藤、なにかあった?
浩介:小林か。……僕って変わってないかな?
純子:へっ!?あんたっていつも突然ね!
浩介:真剣に!

純子は少し笑いながら答えた

純子:そういうとこ変わってないわよ
浩介:そうか、、、(少し下を向いた)
純子:え!違った方がよかったの?
浩介:いや、そうじゃないけど。色々複雑で、、
純子:そういうちょっと弱っちいとこも変わってないわよ!
浩介:↓↓
純子:もう!(少し困ったようないかにも女の子らしい顔をした)

そんなこんなでこの日は終ろうとしていた。浩介は最後まで昭平と口を聞かなかった。
途中まで三人で帰ろうというかおりの誘いを断わり、昭平とかおりを二人で帰らせた。
浩介には何も二人に起こらないことが予測できた。予測できなかったとしてもそうしただろう。
なぜだろう?変な感じだった。ここの三日、凄い日が彼の回りを駆け巡ったせいで
なんだか疲れたのだろうか。今の彼は誰とも仲良くできない気がした。浩介は黙々と金槌を振った
気付くともう22時近くを回っていた。
ほぼ完成したということで浩介達のクラスは今日は終ることにした。
とはいっても浩介と数人の大道具の男子しかもういなかった。
よそのクラスも残っていたがほとんど帰っていた。
戸締まりのセンセーが各活動場所の倉庫の鍵の戸締まりをしにくるからでもある。
とっとと片付けを済ませ自転車を引いている浩介を見つけ女が呼んだ

女:浩〜ちゃ〜ん!これ運ぶの手伝って〜

浩介は重い物を持っているからか、体をワナワナと震わせて、細く絞り出したような、
色っぽい声にドキッとさせられた。回りには彼女しかいないらしい。よく見ると彼女は美雪だった。
浩介は自転車を倒しリュックをしょったまま走りより、
美雪の持っている道具入れと見える箱の端を持った

浩介:どうしたの?こんな遅くまで。(そして回りを見渡し、驚いた顔が微笑へと変わっていった)
   こんな重い物女の子一人に持たせる男はなに考えてるんだろ〜ね。
美雪:私が最後まで残ってやってたから悪いのよ
浩介:そもそもそこがおかしいよ。女の子一人残すなんて、ここは学校だから安全だなんて
   大間違いだ、、、夜の学校にはお化けがでるって言うのに

そう言って少し真面目な顔をする浩介を見て美雪は思わず笑ってしまった

美雪:もう。ホント面白い

回りには誰もいなかった。みんなとっとと片付けをして、教室にある自分の荷物をとりに急いだのだ。
戸締まりが来る前にと。この時期はセンセ―達も大変である。
生徒の居残りに付き合ってると23時も回りかねない。今日の戸締まりの野球史の南波は
なかなか生徒思いであった。
そうこう楽しいお喋りを交わしてるうちに倉庫の前についた。
美雪は倉庫の一番奥の曲がったとこを目で指した。この倉庫はL字型に曲がっていた。

浩介:ここだね。せ〜ので放すからね。せーの。

どしっと箱を置いたとこである。「ガシャ〜ン!!」という音と共にいきなり
薄暗い倉庫内が真っ暗になった。

美雪:きゃっ!

浩介は立ちすくむ美雪を後に、閉められた戸の前に来た。何度か叩いても何にも起こらない。
小さな鍵穴から外を見るとそこには耳にイヤホンをしながら踊る南波がだんだん小さくなって行く。
この音は耳に入らないらしい

浩介:じょーだんでしょ?!

何度も叫んだが南波は止まらない!そしてとうとう見えなくなってしまった。ここは校舎裏の倉庫。
南波を止めれなかった今となっては発見されるのは明日の朝になるだろう。

浩介:嘘だろ…

そう小さく呟いた


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