プチ春劇場:「あなた自身の天使のために」:第10話



そして前夜の日を向かえた。昭平達のクラスは四番目で前のクラスは岡田達のクラスだった。
クラスの男子のほとんどは概要は知っていたが、昭平が誰に言うか知らなかった。
そして、岡田達のクラスアピールが終りいよいよ昭平達のクラスだ。
体育館に観客の拍手。舞台には次の発表を紹介するしか司会者がいる。

舞台横

昭平:俺がこうこう、こうするから・・・・・・
男子達:おー!
昭平:この前の練習の通りやれよ!
男子:おー!

昭平達はこの日のために日頃から休みの時間にこっそり体育館に忍び込んで、
リハーサルを繰り返していた。照明からマイクの位置までばっちり把握していた
彼等の心の中に「Born To Love You」が流れた。
彼らは左胸に右手を当てた。

昭平:よし!行くゾ―!ウィ―ア―○×□△〜!
男子全員:Win!Win!Win!!

男子達は一斉に走り出した。舞台では昭平達のクラスの女子がスタンバイしていた。
修一は照明担当の男子に合図を送った。他の男子達も持ち場についた。
浩介は風邪で学校を休んだ。

司会者:では、そろそろ準備できたようなので。お願いしま〜す

しかし曲がなかなかかからずに、体育館はザワついた
(男子CとDが音響機材をのっとった。横にはクラスの女子Cが紐で縛られていた)

男子C:ゴメンね、C子ちゃん
男子D:いいから曲早くかけろよ。えーと、スイッチ、、
女子C:ん、ん〜、、
男子C:あった。ポチッとな。

暗闇の舞台の上では

かおり:え?どうしたの?
純子:知らないわよ
女子達:なに?なに??

スポットライトが舞台にともった。舞台の真ん中に昭平がいた。
そして平井堅の「瞳を閉じて」がかかった

昭平:みんな!こんなことしてごめん!
女子達:山本君!
男子A:何言ってんだよいまさら!
女子A:何やってるのよ!
女子B:今、発表の時間なのよ!男子達が女子達を舞台横へとおいやった。
昭平:俺・・・

クラスも女子も体育館もザワついた。
舞台横から

男子B:いいから言え!
男子C:今しかないんだぞー
昭平:僕は文化祭の演劇で「天使に恋をした」のキャストをやっている山本昭平です!
   僕は役の中で、いつもある女子にフラれています・・・・でも、もう「昭平」は嫌です!!
   僕はこの場で言います!・・・中学の時から好きな女子がいました。
   僕はその人の笑顔を見ると心が温まります。彼女の楽しそうな顔を見ると僕は幸せな気持になれます。
   でも、彼女が他の男子と仲良くしているととても嫌です。そんなの耐えられません!
   ・・・・・けれど彼女にはいつまでも笑っていてもらいたい・・・・
   僕は若佐かおりのことが好きです!!好きなんです!・・・・
   彼女が泣いていると僕は悲しくなります。だから、ずっとこのことが言えずにいました。
   僕が彼女のことを意識しはじめてから6年。ずっと言いたくても言えなかったんです。
   ・・・もう、口をつぐむことは耐えきれない!僕はかおりのことが好きだ――!!

かおりは下を向いていた。純子達は声をかけることができなかった
そこに「生徒会」と書かれたバッチをつけた岡田が舞台に上がってきた。

岡田:山本君!君は何をしているか分かっているのか?
   こんなところでそんなことをしていいと思っているのか?今の若佐さんの気持を考えろ!
昭平:俺にはもうこうでもしないと言えないことがあったんだ!
岡田:とにかく、ライトを消せ!音楽を止めろ!早くこいつをつまみ出せ!

生徒会の連中が舞台に上がってきた。照明も落とされ曲も止められた。
そこにクラスの男子達が上がってきた。生徒会との激しいもみあいになった。
体育館は騒然。舞台の上では騒動が続いた

男子A:言わしてやれ!
生徒会A:しつこい奴だな!
男子B:言わしてやれよ!
生徒会B:命令なんだ!やめろ!
男子C:どうしてわかってやらないんだ?昭平にはラストチャンスなんだよ!
    もう文化祭が高校最後のチャンスなんだよ!
男子B:こうでもしないと駄目だったんだよ!


スポットライトがザワめく舞台の上で取り押さえられている昭平にあたった。
スポットライトは舞台セットでないためスイッチがつけれた。
クラスメイトの男子の一人の生徒会の命令を無視したのだった

生徒会A:・・・・
生徒会B:・・おいやめろよ
生徒会A:「天使に恋して」のアピールを続けます。(マイクを持って、立ち上がった)
生徒会B:は!?何いっ・・・ふ〜しょうがない。Aがそう言うなら
    (Aは前夜長であった。ちなみ岡田は三年演劇アピールの責任者という名目であった)
生徒会A:放してやれ!ライトをつけて
岡田:君も何をやっているか分かっているのか?同情してどうする!
生徒会A:岡田先輩。僕らは団体の発表を仕切ることはできても止めることはできない。
     何をするかは団体の自由。そうでしょ?前夜規定事項、第三十・・・
岡田:それくらい知っている!だがその発表が一人の女性を傷付ける。そのことを許すなんて・・・
生徒会A:これは決断です!彼らはその女子生徒を侮辱するようなことをしているわけではない。
     先輩は従ってください!
岡田:・・・わかった

そう言い残した岡田は若佐のもとへ行き、若佐を連れて体育館を出た
体育館には少しザワが残っている

生徒会A:静かにしてください。まだ団体の発表の時間です。(マイク越しに、舞台横から)

それから昭平達のクラスの発表は続いた。それからは何もなかったかのように時間と場所を告げ、それで終った。
あとで男子達はクラスでも、担任の先生にもこっぴどく怒られた。
昭平はうまく自分の気持を伝えれなかったが、悔いはなかった。

風邪で休んでいたはずの浩介は図書館にいた。一人建築の本に目をやりながら前夜のことを考えていた。
いつもの席で…

浩介:あ〜。今頃どうなってんのかな〜?やっぱ、行けばよかったかな〜
美雪:そうですよ
浩介:!?美雪ちゃんいたの?
美雪:はい
浩介:どうして?今日発表あったんでしょ?
美雪:さ・ぼ・り
浩介:美雪ちゃんもするんだ〜
美雪:嘘ですよ。私が浩ちゃんみたいなことするわけないでしょ
浩介:そうだよな〜どうせ僕みたいなことしないよね(↓)
美雪:ち、違いますよ〜冗談ですよ〜。私たちのクラスフラッシュだから
浩介:いいんだよ(「サボリじゃん」)
美雪:どうしたんです?元気ないですね〜。浩介さん、悩みごとなら聞きますよ
浩介:悩みごとなんて(「ある!」)ないよ〜・・・望みはあるけどね(「彼女がほしい!」)
美雪:なんなんです?望みって
浩介:(「美雪ちゃん、彼女にならないかい?・・・て言ってみようか」)・・・
   (「そんなこと言えるわけないじゃないか!」)紅茶が飲みたい!

なんの考えもなしに出たとっさの言葉だった
そして、自分の水筒にあるお茶を口にした

美雪:私のでよければありますよ(飲みかけのペットボトルを浩介に渡そうとした)

浩介思わず口に含んだお茶を吹き出した。

美雪:冗談ですよ
浩介:なんだ(また自分のお茶を口にした)
美雪:どうせ望みって言うのはエッチなことなんでしょ?

浩介またまた吹き出した

浩介:え!?
美雪:図星ですか?
浩介:誤解だよ。(「そんなこと言える子だったの!?」)
美雪:どうだか
浩介:ちょっと待ってよ・・・
美雪:また建築の本なんですか?(微笑)
浩介:ああ
美雪:夢あるんですか?
浩介:うん、僕が造りたい家は・・・(「前にも、こんな話したっけ」)

浩介は暫く語った

美雪:じゃあ、そんな家できたら、私を最初のお客にしてもらえないでしょう?
(そこには昔のかおりと同じ笑顔があった)
浩介:・・・(下を向いた)
美雪:駄目ならいいんですよ(問掛けることのない笑顔が少し上を向いた)
浩介:いいんだよ。美雪ちゃんはスペシャルゲストとして呼ぶよ
美雪:うれし〜

浩介は初めの客として美雪を呼べなかった。それはかおりに気があるからでも美
雪より先に約束していたからでもなかった。かおりへの浩介の気持は浩介自身で
もよくわからないほどの不思議な変化をした・・・
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